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整体・鍼灸・健康のお話し

シリーズ 私の整体学

 

良書の紹介

血液とリンパのしくみを学ぶ
(W・B・キャノン著『からだの知恵 この不思議な働き』舘鄰+舘澄江訳 講談社より)

はじめに

 整体や光線療法の効果として、よく「血液やリンパの流れをよくする」と言われます。なぜ流れをよくすると症状が改善するのでしょうか。その生理的なメカニズムは何なのでしょうか。また「リンパ」とは半透明な体液のことで、これが治療とどのような関係があるのでしょうか。
 整体について理解するために、このリンパについての生理的なしくみやすぐれた働きをしっておくと、整体に対する見方は変わってきます。また人体の構造のすばらしさや、自然治癒力の不思議な働きがよくわかるようになってきます。

 リンパとは毛細血管からにじみ出た組織液のことを言います。にじみ出たリンパは再び毛細血管が吸収して心臓に戻りますが、リンパ管に吸収されて心臓に戻るものもあります。脇の下やもものつけ根などに、このリンパ管を濾過する装置のようなものがついています。ここでは細菌やウイルスなどと戦ってくれるリンパ球を作っています。
 リンパの仕組みや働きは、血液ほどにはよく知られていませんが、体を維持したり守ってくれるものとして、リンパは非常に大切な働きをしているのです。
 W・B・キャノンという人が書いた『からだの知恵 この不思議な働き』という本がありますが、その中にリンパについてとてもよく分かるように書かれた部分があります。とても素晴らしい本ですので、興味を持っていただいた方はぜひ購入して読んでみられることをお勧めします。
 アメリカの生んだ偉大な生理学者であるキャノン博士は、この本を約70年前に発表しました。「恒常性維持機能(ホメオスターシス)」という概念を発見した人です。
 「恒常性維持機能(ホメオスターシス)」とは、環境の様々な変化に対して体が本来あるべき状態を保とうとする働きのことです。この恒常性を保つために自律神経、ホルモン系そして免疫機構が働いています。恒常性が崩れてくるときに体が不調になったり、さまざまな病気になったりするわけです。自然治癒力はこの恒常性維持機能の働きの現れと言っていいでしょう。
 『からだの知恵』を読みますと、人間の体の働きがいかに神秘的ですばらしいものであるかということを改めて教えられます。
それでは次にこの本からいくつかの抜粋部分を紹介します。少々長いですし文書の言い回しが難しいかもしれませんが、とてもいい勉強になると思いますのでお読みいただければと思います。

『からだの知恵 この不思議な働き』より抜粋

生命の環境としての水

 川底の岩についている簡単な生物に対しては、流れる水がその生存に必要な食物や酸素を運び、老廃物を運び去っていく。我々のからだの個々の細胞は、小川の流れの単細胞生物と同じ要求を持っている。しかしわれわれのからだの細胞は、食物や水や酸素をはるかに隔った大きな環境から直接手に入れ、活動の結果生じた老廃物をそこに放出する幸運には恵まれていない。そこで、体そのものの中に巡り動く流れ(血液とリンパの流れ)を発達させて、必要なものを得たり、不要なものを捨てたりする便宜を図っている。
 この二つの流れは共同して、食物や酸素を体の湿った表面から運び去り、体のはるか端の片隅にある細胞にまでも、必要なものを運んでいる。逆に、これら細胞から、活動の結果生じた不要な捨て去るべき老廃物を、肺や腎臓の中の湿った表面に持ち帰る。
 血液やリンパ液の流れは互いに連絡しあい、あたかも小川の流れが湿地の中を通って、そこのよどんだ水と連絡しているような具合である。血液は管状の決まった通路に沿って流れ、リンパ液あるいは組織液は、血管の外にある体の組織のあらゆる隙間を満たしているが、結局、血液と同じように自身の導管に集められ、ゆっくりと1ヶ所から他所へと移動していく。

血 液

 血液には膨大な数の赤血球や、小さな、自ら運動することのできるたくさんの白血球が含まれており、これらはすべて、塩類、糖、蛋白性の物質の濃い水溶液、つまり血漿の中に漂っている。
 血漿は、血液の半分以上の体積を占めており、腸管の消化作用の最後の過程で作り出されたあらゆる類の栄養物を運搬するコンベアである。このような栄養物は、酸素と同様、生物の体のあらゆる場所に運ばれて、すべての細胞に、どんなに奥まった片隅にあるものへも、しかるべく行き渡り、必要がなければ体の特定の器官に運ばれ、将来に備えてたくわえられる。
 血漿のもう一つの機能は、体のいたるところにある細胞から、体の機構が働いて生じた炭酸ガス以外の老廃物を運び去り、腎臓へ届けて、そこから体外に排出させることである。

リンパ液

 リンパ液が血液と異なっているのは、主にそれが血球を含まず、たんぱく質の含量も血漿ほどには多くない点である。しかし、白血球は持っているし、糖と塩類も含んでいる。
 リンパ液、あるいは組織液は、血管と組織の細胞の間に広がっており、細胞と流れる血液との間で互いに交換される物質はすべてリンパ液の中を通り抜けていく。つまりリンパ液はそのような交換の直接の仲介者なのである。

血 管

 血液が循環しているのは、いろいろの物質の供給をする場所や不要になったものを捨てることのできる場所から、遠く離れた場所にある細胞に、そのような便宜をはかるためであるということをいつも忘れてはならない。明らかにこのような仕事は、血液が流れている血管を通して行われなければならない。動脈の壁は厚すぎて、物質が出たり入ったりすることはできない。物質の交換は「毛細血管」の壁を通して行われる。
 毛細血管は、直径が約1000分の6ミリメートル(6ミクロン)で、細かな網目のようになって、体のいたるところで、細胞の層や細胞のかたまりの間にびっしりと入り込んでいる。そして毛細血管のあるところでだけ、必要な物質の交換が行われる。循環系のほかの一切の部分は、この毛細血管の部分の流れを保つために存在しているのであり、毛細血管のあるところで血液は細胞にとって役立つものになっている。

リンパ液の循環

 リンパ液は、血漿の一部が毛細血管の壁から濾し出されてできたものである。体のある部分、たとえば肝臓では、毛細血管は非常に「透過性」に富んでおり、常にリンパ液が濾し出されているが、ほかの部分、たとえば手足では、運動しているときにだけこのようなことが起こる。
 リンパ液はまったく違う二つの方法で血液に戻ってくる。器官の活動が止まり、そのため毛細血管の透過圧が下がると、リンパ液の主に水の部分は、毛細血管の壁を通ってある程度中に戻る。一方、リンパ液はそっくりそのまま、非常に薄い壁で仕切られた、いわゆる「リンパ管」の中に入り、それに沿って心臓の近くの大きな静脈まで達し、そこから血液の中に流れ込む。太いリンパ管は、静脈と同様、弁(椀のような形の袋で、管の内側についている)を持っており、心臓とは逆の方向に流れないよう防がれている。そのためどんなわずかな圧力がリンパ管に加わっても、そのたびに中のリンパ液は出口に向かって押し進められることになる。
 リンパ管の途中には、節とか、「腺」といわれるものがあるが、これらはふるいの役をして、組織の隙間に入ってきたバクテリアのような細かな粒子を食い止め、体のほかの場所に広がるのを防いでいる。こうして体を守っているときには、これらの節は大きくなり、膨らんだ柔らかいぐりぐりとして触れることができる。

血液とリンパ

 出血した場合、体の端のほうにあって、血管の収縮が起こっている場所にある器官は、適当な血液の供給を受けていない。この状態を解決するひとつの有効な手段は、血液の量を増やし、収縮前の状態にある血管系を充分満たすことができるようにすることである。
 毛細血管の壁を通って、組織の隙間のリンパ液から水分(及び塩分)が血流に加わり、循環する血液の量はある限られた範囲で増加する。また、血液の持つ水の量はリンパ液よりも少ないので、リンパ液中の水は血液のほうへ拡散して戻ってゆく傾向があるためであると説明されている。
 つまり血液は、ゆっくりと移動している部分であるリンパ液に援助を求めて、次第にその量は元に回復するが、同時に体には多くの水分を取り入れるのである。
 また抹消部分にあるリンパ液から、水と塩分が移動して少なくなったり、これらの部分が必要とする水の供給を受けられなくなったりすると、数多くの興味ある影響が出てくるが、その一つは渇きという現象である。

水分の貯蔵

 水分が主に筋肉と皮膚にたくわえられている証拠は、出血後にさまざまな器官を調べてみて、さらに動かしがたいものとなった。出血すると、リンパ液から血液へ水分が移動することはすでに学んだ。この過程では、すべての組織が水分を失う。
 組織の隙間は、水が充分に補給されているときには水で潤されていて、補給が少なくなると水路(血管)の中へ少しずつ戻っていく一種の沼地であると考えることができるだろう。このような関係を作り出しているしくみは、おそらく細かい編み目のようになった柔らかい結合組織、特に皮膚の下や筋肉の束の間にあるらしいが、体のほかの部分にもあるであろう。
 結合組織がほかの組織と違っているのは、非常にたくさんのコロイド性の物質が細胞の外側に含まれており、血管と緊密な連絡を持っていて(実際、血管はこのような結合組織で支えられている)膨大な表面積で血管に接しているという点である。
 主に、このような組織の中に、移動しやすい水ばかりでなく、それに溶けている塩類や糖分(ブドウ糖)などの物質が保持されている。この組織の中には細胞はほとんどなく、その代わりに、少量の「接着剤」を含んだ「微細な繊維状の物質が海綿のように細かな網を作ったもの」が見出される。
 水やその中に溶けている物質は、この網目の中に、何らかの方法で網目と結びついてたくわえられているのだと思われる。また、心臓や腎臓の働きが完全ではなくなったときに、液体が溜まるのもこの網目である。くるぶしがふくれたり、あちこちの皮下がはれて膨れ上がったりする、水腫とか「浮腫」は、結合組織に溜まる水の量が、もはや正常ではなくなったために起こるのである。

むすび

 いかがでしたでしょうか。もしかしたら理解しづらかったかもしれませんが、血液やリンパだけとってみてもこのようにすばらしい働きがあるのです。
 人間の体にはまだまだ無数の働きがあり、よくぞこのような仕組みが出来たものだと感動させられます。脳の働きや心の働きにしても本当にすばらしいものがあります。
 人間は本来健康で元気に生きる力が与えられているはずです。それが何らかの原因によって邪魔されたり阻害されてしまったため、いろいろな病気や障害が起こってくるのです。心や精神についても同じ事が言えると思います。本来は明るく幸せで、愛に満ちている存在だったはずです。それが何かによって傷つけられたとき、人は病的な心になってしまうのです。
 治療とはこの恒常性を阻害しているものは何かを見つけ、そして原因を取り除いていく作業だと思います。原因を取り除いたり、あるいは不足しているものを補うことによって、体は徐々にその本来の健康な状態に戻っていく力が働き始めるのです。