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整体・鍼灸・健康のお話し

シリーズ 私の整体学

 

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の研究(一)

はじめに

椎間板ヘルニアとは

 椎間板は脊椎の骨と骨の間にあって、クッションのような役割をする軟骨です。その中心部分に髄核というゼラチン状のものがあって、それを線維輪という皮が包んでいます。この髄核が何らかの原因によって圧迫されて、線維輪が膨隆したりすきまから飛び出した状態を椎間板ヘルニアと呼んでいます。ヘルニアとは日本語で「飛び出す」といった意味です。
 その飛び出した髄核が脊髄や神経を圧迫するために痛みや麻痺を起こすのです。最も多いのが腰椎椎間板ヘルニアです。
 ぎっくり腰を繰り返すうちに次第にヘルニアに移行する場合もあります。

坐骨神経痛とは

 坐骨神経は神経の中で一番長く、1メートルくらいあります。最も多い原因は、ヘルニアによって神経が圧迫される場合で、臀部に痛みが限局したケースや太ももの裏、ふくらはぎからかかとのあたりまで痛みが走るケースが最も一般的です。
 またヘルニアの場所によって痛みの場所が異なるものもあります。
 椎間板ヘルニアによらない坐骨神経痛もあり、内臓の病や神経の障害によるものなどさまざまなケースがあり、痛み方も切られるような感じの痛みやひきつれる感じ、しびれるものなどがあります。

椎間板ヘルニアについての考察

 治療の現場で数多くの椎間板ヘルニアの患者さんを診ていますと、ヘルニアの構造には2つのタイプがあるのではないかと思われます。これは精密な検査をして分かったものではなく、あくまで患者さんの痛み方の様子と触診による推論です。

タイプ1

 1つ目のタイプは背骨(椎骨)のズレによって線維輪が裂けてヘルニアになるものです。ズレの方向には前後左右などいろいろなものがありますが、タイプ1では椎骨がねじれる形のズレが多いです。
 この症状の方はベッドの上で姿勢を変えるのもつらく、圧痛も大きいものですが他のタイプよりも早く良くなる場合が多いように思えます。
 問題はズレの原因を「骨の異常」と見るか、「筋肉の異常」と見るかによって、治療の仕方が変わってくることです。整体は様々な流派や治療方法があるのは、ズレの原因をどのようにとらえるかの違いによると考えていいと思います。
 私はズレの原因を、骨を支えている筋肉の異常ととらえています。
 そしてある部分の筋肉だけが異常に硬くなっている時、筋肉は弾力性を失って縮んだままになっているのです。筋肉は骨と骨をつないでいますから、ある方向にだけ骨が引っ張られている状態が続くわけです。ですからそこに何らかの力が加わったときに、一気にズレを引き起こします。ということは筋肉の異常を正してやれば、ズレは脱臼を起こしていない限り元に戻っていくと考えていいわけです。
 ではどのようにして筋肉の異常を正していくのかということになりますが、これが手技療法の得意とする領域になるのです。患者さんの症状や筋肉の状態に応じて、指や手掌や肘を使い分けながら、細かな施術をしていきます。それから私の治療院では光線療法も併用しています。光線療法については私のホームページの光線療法のコーナーに詳しく書いていますので、それをご覧いただけたらと思いますが、簡単に申し上げますと血液やリンパの流れを良くすることで、循環不良によって悪くなった組織や細胞が活性化させ、自然治癒力を高めることで症状を改善する療法と言っていいでしょう。

タイプ2

 2つ目のタイプは椎間板の退行性変性によるものです。
 何らかの原因により、椎間板の中の水分が少なくなってクッションの役割が弱くなり、同時に線維輪の弾力性や耐性が弱くなってしまった時に、上下からの圧力に耐えられなくなって、ちょうどマヨネーズの袋を上から押しつぶしたときに、中身が袋を押し破って外に飛び出すような形でヘルニアが起こっているのではないかと思われるものがあります。
 これは筋肉が骨を引っ張っているために起きたわけではありませんから、触診しても筋肉の異常はほとんどありません。またベッドの上で姿勢を変えるときも痛みがなくスムーズに動くことができます。但ししつこい痛みだけがずっと続き、夜中も痛くて眠れないという人もいます。ちょうど突き指をして指の軟骨が押しつぶされたときのような状態に似ているかもしれません。解剖してみないと分からないかもしれませんが、タイプ1の骨のズレによるものとは違い、おそらく椎間板が上下の圧力によって押しつぶされているのはないかと考えられます。このタイプは坐骨神経痛も併発している場合がほとんどです。

参考:痛みの特殊なタイプ

 参考までに、私がこれまで見てきた椎間板ヘルニアによる痛みの中で、特殊な痛みと考えられるタイプについてふれておきたいと思います。それは神経の異常や、内臓疾患、精神的なストレスなどからきていると思われる痛みですが、原因がよく分からないものもあります。
 さまざまの要因が重なって、許容限度を超したときに神経伝達の時に出されるホルモンの内、発痛作用をもたらす物質が間違って出されているのかもしれません。あるいは坐骨神経そのものが何らかの原因により痛みが生じているのかもしれません。
 また、ずっと続いていた痛みが故郷にしばらく静養に行っているうちに、突然消えてしまったという症例もあります。これなどは精神的な原因よる痛みと考えてよいのではないかと思います。

タイプ1に対する治療方針

筋肉の緊張

 これは疲労が続いたり、あるいは骨が外部からの力によって少しずれたりした時に、一時的に筋肉が硬く緊張した状態になります。
 疲労によるものの場合は簡単に治る場合が多いです。外部の力でズレを生じた場合の筋肉の緊張は、ズレが戻ると解ける場合がほとんどです。

筋肉の硬結

 筋肉の中に疲労物質がたまり、それが蓄積され続けると、慢性的に筋肉が硬くなってしまうことがあります。これは長年に渡って筋肉が悪化したもので、簡単には治りません。乳酸などの疲労物質は酸ですから筋肉を傷つけますし、慢性化すると筋肉は硬くなって弾力性を失い、それが続くと変性を起こして縮んできます。なぜこのようなことが生じたのかはいろいろな原因があると思いますが、簡単に言いますと疲労物質を浄化する機能が衰えていると考えていいと思います。そして体の中のある部分や、ある筋肉にだけ疲労物質が蓄積し、しかもその部分の浄化機能だけが弱っている場合、その弱っているところがたまたま腰や臀部ですと、腰痛になるというわけです。
 また血液やリンパの循環も局所的に悪くなっているとも考えられます。
 循環が悪くなっていることを東洋医学では淤血(おけつ)、西洋医学では微小循環障害と呼んでいます。『私の整体学1』でも書きましたが、淤血と微小循環障害という概念についてもう一度復習してみましょう。

淤血と微小循環障害及びその改善

 淤血とは東洋医学で使われる言葉で、正常な循環が行われていないで滞っている血液のことで、痛みや不快感を生じる原因にもなり、自然治癒力も弱ってしまいます。
 川の流れも滞ると汚れてきますが、同じようなことが血液にもいえるのです。
 淤血があると酸素や栄養を運んだり、全身の細胞の老廃物を運び去ってくれる働きや、細菌などをそうじしてくれる働きに支障を来します。
 また微小循環障害とは西洋医学の言葉で、毛細血菅の流れが悪い状態を言うのですが、淤血と同じ概念と言っていいでしょう。
 以上のように淤血や微小循環障害は、放っておくとさまざまな病気の原因になりますので、これらの淤血や微小循環障害を取り去ることが治療の核心になるのです。
 取り去る方法も手技療法の得意とする分野になり、時間はかかりますが確実に良くなりますし、患者さんの側からもそのことは実感できます。淤血や微小循環障害がとれれば、筋肉は再び正常な柔らかさになり新鮮な血液とリンパが充分に流れることによって、痛んだ組織や細胞も新陳代謝を繰り返しながら正常なものになっていきます。
 ここで大事なことは、新しく細胞が生まれる場合には、充分な栄養や酸素が必要になるということです。循環障害があると新陳代謝も不十分ですし、新しい細胞への栄養や酸素も不十分ですから治癒は難しくなるのです。筋肉が正常な状態に戻れば、神経を圧迫していた状態がなくなり、その結果痛みやしびれといった神経症状も改善していきます。

タイプ2に対する治療方針

 椎間板が上下から押しつぶされていると思われるタイプは、私の臨床経験からそう考えざるを得ないパターンです。このタイプは時間がかかります。線維輪自体が修復して、弾力性を取り戻してくれるのを手助けする治療方法を考えていく必要があります。このタイプに対する治療のプロセスと理論は手技療法の範疇を超えているかもしれません。
 文章にすると長くなりますが、まず手技療法の効果として皮膚や筋肉に対するアプローチによって自律神経系が癒され、健全なバランスが取り戻され、また心地よい刺激が脳内ホルモンの内のβ-エンドルフィンの分泌を促すことによって自然治癒力が高まるということになります。
 治療する直前まで痛くてたまらなかったのが、手技療法を施しているうちに痛みが全く消えてしまったという人が時々いますが、β-エンドルフィンの分泌が増えたからではないかと思われます。しかしその状態は2,3日しか続かずまた当初の痛みが戻ってくるのです。
 こうした現象を何人か見ているうちに、今述べている内容のことが考えられてきたのです。

 ところでなぜ腰椎の線維輪が弾力性を失ってしまったのかということについてですが、原因は分かりませんが局所的に線維輪の組織や細胞そのものの生命エネルギーが弱くなっていることは間違いないと思います。これは病気について考えるときにいつも抱く疑問ですが、慢性疾患は体全体の病が局所的に現れるというのが通説ですが、ではなぜ体の中のある部分だけが機能が衰え、他はなんでもないのにその部分だけに病気や障害が発生するのかという疑問です。人間の体の神秘と言っていいと思います。
 しかし原因はどうであれ、とにかく痛みを取り除き、少しでも健康な状態に戻すのにはどうしたらよいかと研究し続けた結果、私は栄養素療法や光線療法にたどりついてしまったのでした。
 特に原因が分からない痛みや特殊なケースなどは、内臓も含めた全体的な治療や、カウンセリングなどの精神面へのアプローチも効果的だと思います。