「うつ」で悩んでおられる方は「私はうつなんです」と告白されることが多いように思います。
よく正直に自分が今苦しい状態であることを話してくださったと思います。しかし一般的にはどう答えていいかわからないためにそのまま沈黙してしまったり、あるいは元気を出すように励ましてしまうケースが多いかもしれません。
「うつ」はとてもつらい症状です。いろいろな事情で、少しずつ「うつ」になってしまった方が多いと思います。これまで会社や家族のために一生懸命働いて、そしてどうにもならない困難な状況が続いたために、いくら頑張りたくてももうこれ以上の余力が残されていないという状況に陥ってしまったのですから。「うつ」はそんな状況にもかかわらず、やけを起こしたり周囲の人にストレスをぶちまけたりせず、ひたすら耐えてその困難を一人で乗り切ろうとがんばってこられた結果、あらわれた症状だと言っていいと思うのです。
「うつ」で悩んでおられる方とお話ししていて感じることは、とても優しい心を持っておられる方が多いということです。他人のことにとても気を使われるという特徴があります。そしてとても心が純粋です。それはとてもすばらしいことです。事実、社会的にも立派な業績を上げて、周囲からも信頼されていらっしゃる方が多いのです。しかしこれまでの人生の中でいろいろなことがあって、心の深いところに傷を負ってしまわれたのではないでしょうか。
傷をしたらだれでも痛いはずです。そして傷というものはある程度治っても、無造作にふれられるとまた痛み出すことがあると思うのです。そんな時に明るい表情で生きることなど、なかなかできるものではないでしょう。痛くない顔をして元気そうに振る舞うことは、短期間なら出来るかもしれませんが、それをずっと演じ続けることは本当に難しいはずです。しかし長くかかるかもしれませんが、自然治癒によってやがて傷口が治るように、「うつ」もやがて癒えていくと思うのです。
自殺を図って助かった方のほとんどは「生きていて良かった」と思われるそうです。病院で医師や看護士の人たちが懸命に介助してくれるのを見て、あるいは家族や友人が自分のことをとても心配してくれるのを見て、もう一度生きようと思うようになるのだそうです。
「うつ」を経験した方は、以前と比べて心が豊かになり、人の心を思いやる優しさが、より深くなっている方がほとんどのようです。
「うつ」はかつての自分のように心に痛みや苦しみを抱えた人を慰め、その人のよき友人となれるように、天が与えてくれたギフト(贈り物)かもしれません。きっといつの日か、その人にしかできない働きが待っていると思います。

