春山茂雄著『脳内革命(サンマーク出版)』を読む
『脳内革命』は1995年に刊行され、数百万部の空前の大ベストセラーとなった本です。田園都市厚生病院院長である著者の春山茂雄氏は、実家が東洋医学の実家であったため、幼いころから鍼灸指圧などの修行をさせられていました。春山氏の病院では西洋医学と東洋医学を融合し、食事・運動・瞑想を根本にした治療や健康指導を行って、高い評価を得ておられます。
この本をすでに読まれた方は多いと思いますが、今回はまだ読んだことのない方はもちろん、すでに読んだという方にとっても、改めてこの本から素晴らしいものを学んでいただけることと思います。
今から『脳内革命』に書かれている大切なエッセンスを一緒に読んでいきたいと思います。もし興味をもたれた方はぜひこの本(続編の『脳内革命2』もあります)を購入されて、読んでみられることをお勧めします。
きっと人間の身体のもっているすばらしいしくみに感動され、生き方の大きなヒントを得られることと思います。
脳からモルヒネが出る!?
脳内モルヒネは以前からその存在はわかっていましたが、痛みをやわらげる効果くらいしか注目されていませんでしたが、近年になってその素晴らしい効力が発見されました。
本文の19ページにこう書かれています。
「人間は怒ったり強いストレスを感じると、脳からノルアドレナリンという物質が分泌されます。この物質はホルモンの一種なのですが、どういうわけかものすごい毒性を持っている。自然界にある毒物では毒蛇に次ぐ毒性をもつともいわれています。
もちろん脳内で分泌されるのはごく微量にすぎませんが、いつも怒ったり強いストレスを感じていると、この毒のせいで病気になり、老化も進んで早死にしてしまう。私の病院に来た患者さんもそうですが、どんな病気にもノルアドレナリンが関係していると言ってよいほどなのです。
一方でβ-エンドルフィンというホルモンがあります。このホルモンは脳内モルヒネとして一番効力のある物質ですが、この両者の間に奇妙な相関関係のあることが判明したのです。人から何か言われて「いやだな」と思うと、脳内に毒性のあるノルアドレナリンが分泌される。そのとき逆に「いいな」と思うとβ-エンドルフィンが出るのです。」
β-エンドルフィンはからだの免疫力を高めたり、痛みを和らげたり、気分を良くしたりするホルモンです。よくジョギングやウォーキングをしているうちに、とても気分がよくなって心の中に明るいことばかりが発想されて、まったく疲れを感じなくなってこのままどこまでも行けそうな気分になることがあります。これはスポーツ医学で「ランイング・ハイ」と呼ばれる現象ですが、脳の中でβ-エンドルフィンが出ているのです。
人間の気分を良くしてくれるホルモンは快感ホルモンと呼ばれますが、そのようなホルモンは二十種類くらいあることが知られています。物質の構造が麻薬のモルヒネと似ていることから「脳内モルヒネ」と呼ばれるようになったのですが、麻薬と違って副作用や依存性は全くありません。そのなかでも最も効力が優れているものがβ-エンドルフィンで、その威力は麻薬のモルヒネの数倍になることもわかってきます。こういうことを知ると本当に人間のからだのしくみは何て素晴らしいのだろうと思います。同時にせっかくそういうしくみが人体にそなわっているのなら、何とかしてこの脳内モルヒネを出しながら生きることを考えたくなります。
この「脳内革命」という本は脳内ホルモンを出すにはどうしたらいいか、そして本当に楽しくすばらしい人生とは何かというテーマについて書かれた本です。だから医学に関する本であるにもかかわらず、数百万部も売れた大ベストセラーになったのです。
ストレスはガンも発病させる
本文の33ページにこんな話がありますので紹介します。
「発ガン物質によってガンになる確立が10%のとき、発ガン物質に加えてある種のストレスが強く加わると、発ガン率が50%にはね上がってしまうのです。・・・また成人病は代謝障害といってよく、これはごく簡単に言えば血液がサラサラと流れなくなるために起きる。ところが脳内モルヒネには血液をサラサラと流す力があるのです。
血液が流れにくくなる原因には大きく分けて二つあります。一つはストレス。ストレスを感じてノルアドレナリンが分泌されると、血管が収縮して血流をとめる。この物理的変化がマイナスになるだけでなく、そのあと活性酸素を大量に発生し、遺伝子を傷つけたり、過酸化資質という老化物質を生成したりして、成人病リスクを高めることになります。」
瞑想と運動と食事
春山氏の病院の主な治療は「瞑想」と「運動」と「食事」、そして独自のメディカル・マッサージだそうです。
瞑想とは座禅を組んで深遠な境地に浸ることをイメージしがちですが、春山氏は瞑想とは楽しいことで頭をいっぱいにすることだと書いています。今まで見たいちばんきれいな情景や、楽しかった思い出や映画などを思い浮かべるだけでα波が出始め、脳内モルヒネが分泌されるといいます。そういった楽しくて快い気分になれることを、ずっと思い浮かべることが瞑想であるといいます。
運動は筋肉をつけるためのトレーニングや、マラソンなどを想像しますが、脳内モルヒネを出す理想的な運動はストレッチとウォーキングだとのことです。
ストレッチは筋肉に気持ちいい刺激を与えてやると、寝ている間に成長ホルモンが分泌され、それが筋肉をつけるのだそうです。またウォーキングなどの運動をする場合も、理想の心拍数というのがあって、それ以上の運動は乳酸ばかりがたまって30歳をすぎると身体によくない事が多いといわれます。
それでは理想の心拍数ですが、(220−年齢)×0.7という式で求められます。
たとえば40歳の人ならば(220−40)×0.7=126が適度に筋肉をつけ、脂肪も燃焼させて、脳内モルヒネも出てくる1分間あたりの心拍数になります。
さらに歩きながら瞑想します。楽しいことや将来の計画や夢について考えるのです。
最後の食事ですが、和食が世界を見渡しても最高の健康食だといわれています。
ところで脳内モルヒネの材料はタンパクです。もし脳内モルヒネをたくさん出せば、それだけ材料を使ってしまいますから、タンパクを補給しなければなりません。タンパクの代表選手は肉、卵、大豆などですが、体のことを考えるといちばんは大豆です。
その次は卵だと私は考えています。肉は動物性脂肪が多く、血液を汚すことが多いため、できれば魚の方がいいと思います。質のよいたんぱく質をとって、肉や砂糖は控えた方がよいでしょう。もし砂糖を使う場合は、白砂糖ではなく黒砂糖かハチミツがいいでしょう。また油もオリーブ油かゴマ油なら健康に大変よいことが知られています。
真善美の生き方と脳内モルヒネ
219ページにとても面白いことが書かれています。
人間の神経にはどんな神経にも強く働きすぎるとブレーキがかかる仕組みがあります。たとえば食欲の場合は、それを満たすとインシュリンが働いてそれ以上食べ過ぎないように抑制してくれます。スポーツも過度にしすぎると身体のどこかに支障をきたして、休まなければならないようにしてくれます。ケガをしたらそれに気づくように痛みの神経が興奮します。すべて身体を守るための自然の働きです。
本文の中で、
「つまり人間が真善美にかかわったり、正義の行動をしたりする時には、それを妨げるものがない。脳内モルヒネはいくらでも出てくる。・・・・
ナイチンゲール、シュバイツァーが90歳の長寿を保ったのも、世のため人のために生きてきたからでしょう。俗人から見れば『つらいことが多いだろうに、何が楽しみであれだけのことができるのか』と思うでしょうが、実はわれわれが感じるのとはけた違いの快感を味わっていた可能性が大きいのです。」
とありますが、春山氏はこのことを最後の章でこう述べています。
「人間は一人一人異なる使命を持って生まれているような気がします。それが何か自覚できた時、神様がごほうびとして脳内モルヒネを出してくれ、この上ない充実感とあくなきバイタリティ、前向きの考え方をもたらしてくれるのだと思います。
それを見つけるには、DNAに聞いてみるしかない。そのためには脳波をα波にして心の深層のささやきに耳をすませることです。
脳内革命とはそのことであり、それは生きる楽しみの発見でもあります。自分の使命がわかったとき、以後の人生は喜びに包まれて永遠に絶えることがないはずです。」

